昨日の授業中
「はーい、では今日は第一段落から見ていきますね~」
なんて言いながら板書しようと黒板を振り返ったら、そこに蜂がとまっていた。
あまりに思いがけなかったもんだから思わず「ぎゃー!」と叫んで飛びのいてしまった。
生徒たちは何事かと一斉に顔を上げてこちらを見ていた。
「ご、ごめん。いきなりだったし、節足動物ってやつは苦手で…」
とにかく気持ちを落ち着けねばと、ひとり暮らしをして初めてゴキブリに遭遇したときの話なんかをした。
「それまでは家族の誰かが退治してくれたんだけど、ひとり暮らしだとそうもいかないんだよね。放っておいて、夜寝ている間に口の中に入ってきたらなんて想像しちゃうともう…」
生徒は「先生にもそんなところあるんやぁ」ととても喜んでいた。
いつもわりとキツイ感じのわたしが、慌てふためき弱いところを見せているのがおもしろかったらしい。
次の時間は隣のクラスの授業で、前の時間に騒いでいたことのお詫びをしつつ
「ゴキブリを叩いて殺すなんていうのは、わたしには無理。だって潰れて変な汁とか出てきたら、それを掃除するのもわたしなんだよ。だからゴキブリが出たら『あんた、ちょっとそこで待っとんなよ』って独り言言いながら殺虫剤とってきて、それで一気にやっつけるの。でも、そのゴキブリを片付けるのも大変。だってほうき使ったら、そのほうきどうすんのよ。死んだゴキブリに触ったほうきを部屋に置いておくなんてできない! だから新聞紙とか丸めて棒みたいにして、それでなんとか片付けるんだよね」
(生徒がおもしろそうに聞いているので、調子に乗って授業とは関係ない話を続けてしまう。)
「いやぁ、ゴキブリも確かに苦手なんだけど、実はいちばん苦手なのは雷なんです。小学校一年生のときの担任の先生が、めちゃくちゃ恐い話を聞かせてくれて。先生の知っている人が、天気の悪い日に川の横を傘さして自転車で通っていたらそこに雷が落ちて、その人は真っ二つになって川に流されてしまったという恐ろしい話。たぶん、先生は雷の恐さを教えようと思って大げさに言ったんだろうけど、それを聞いたわたしの頭の中では妄想が膨らんじゃって、真っ二つになった人のイメージとか、流されてその後どうなったんだろうとかそんなことばかり考えてさ。我ながら、小学校一年生にしてすごい想像力だったと思うよ。それで気付いたら雷が嫌いになってたんだよね」
なんていう話をしていた。
すると、生徒の一人が
「先生かわいいなぁ。押さえるとこ押さえとるわぁ」
と言った。
つまり、かわいい女の条件を押さえているということらしい。
そうなんですか?
かわいいというより情けないんですが、わたくし。
「計算してるか、いないかが問題だよねぇ」
これは、授業のあとこの話をしたときの同僚のお言葉。
おぉ、なんかちょっと怖いことを聞いた気がする…
昨日は散々からかわれて恥ずかしかったけど(放課後まで)、素のわたしを見て喜んでいる生徒を見ていたら、まぁたまにはいいかなんて思ったりした。
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