『あるキング』 伊坂幸太郎
ある天才バッターの伝記小説。
これまでの伊坂作品とはだいぶ雰囲気が異なります。
伊坂さん自身も読者の反応が気になっているようです(「ダ・ヴィンチ」10月号)が、私は好きです!
大きな力、運命とか宿命とか、あるいは権力とか、そういったものに人間としていかに立ち向かうかということが描かれている伊坂作品が好きだということを以前にも書きました。
今回は、そういった大きな力のまん中で、静かに真正面からそれを受け止める人間(いや、王か)の姿が書かれています。
そして、その周囲でワラワラする人間たちの姿も。
そのワラワラとした感じがどんどん不安感とか不穏さとか増大させていく様子は、現実世界の閉塞感ともつながるなと思ったりもします。
が、そこにもまた大きな力が働いているわけです。
こんな、なんだか救いようのない奇妙な世界で、そこに見出せる救いもまた「大きな力」に決められているとなれば、皮肉以外の何ものでもありません。
「でも最終的には人間だよね」と言いたいなぁ。
なんて、このフィクションを読みながら、読者である私はやっぱり抗う方法を考えているわけで、そういう意味で伊坂さんが私に与える影響はこれまでと変わらず大きいのです。
むしろ、描き方が違うために、別の角度から考えさせられるからいい。
伊坂さんの新たな引き出しをのぞけたこともうれしい。
そして何より、読み物としてとてもおもしろい!!
一つ一つの場面について、この小説を読んだ人と語り合いたいなあと思いました。
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