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『恋文の技術』 森見登美彦

ただひたすら手紙である小説。

大学院生である守田一郎氏が関係者に宛てて書いた手紙がただ並んでいるだけであるはずなのに、守田一郎氏をとり巻く人々の姿がありありと見えるし、時の進行が感じられるし、そして何より愛が感じられるのです。

手紙というのはなんとすばらしいのでしょう。

相変わらず森見さんの書く男子は冴えず、思わず

「阿呆や」

と何度もつぶやいてしまうほどです。

しかし、人間誰しも阿呆な部分は持っているのです。

完璧な人間なんていません。

完璧さを装おうとして、逆に阿呆さをさらけ出してしまうことだってあります。

人間とは愛おしい生き物です。

そして例に漏れず阿呆なわたしもやっぱり愛おしい生き物なのです。

ここではたと気づきます。

手紙だってきっと完璧さを求める必要はないのでしょう。

手紙に必要なのはただ一つ。

それはこの本を読んでのお楽しみですけれど。

それがあるから、わたしたちは手紙をもらってうれしいのですね。

メールが一般的になりつつある現在ですが、文通というものをしてみたいなあと思いました。

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日曜日

四月は忙しいのです。

日曜日である今日、一週間分の教材研究をし、一週間持ちこたえるための体力を温存し、それらを明日から五日かけてハイテンションで消費していくのです。

貯金なんてあっという間になくなってしまいます。

「金曜日まで、あたしは立っていられるのだろうか」

「来週の日曜日は、貯金するための時間の余裕があるのだろうか」

なんていう不安を抱えながら、日曜日を過ごします。

思えばわたしは昔から日曜日の夜が苦手だった。

サザエさんを観ながら、なんだか悲しい気持ちになったものです。

明日から学校へ行かなくてはならない、とかそういう問題ではなく、「日曜日」という特別な日が終わってしまうことになんともいえない寂寥を感じていたのです。

三つ子の魂百まで。

日曜日に対するこの愛憎入りまじった思いは、一生変わらぬものなのでしょうか。

そして今日も、いつものようにサザエさんを観、いつものようにサザエさんとのじゃんけんに負け、ごはんを食べて、寝床につくのでありました。

よし、明日からもがんばるぞ!!

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陽春花形歌舞伎 「雷神不動北山櫻」

不動明王、鳴神上人、早雲王子、粂寺弾正、安倍清行の五役を、市川海老蔵さんが演じます。

「雷神不動北山櫻」というのは通し狂言としてのタイトルで、歌舞伎十八番として知られている「毛抜」「鳴神」「不動」はこの狂言の中の一幕ということになります。

「毛抜」や「鳴神」はこれまでに何度も観ている演目ですが、通しで観ると、なるほどこういうつながりがあったのかとおもしろく感じられます。

今回は、海老蔵さんが五役を演じ分けたり、幕が開くと普段の歌舞伎ではあまりないことがあって嬉しかったり、一階の特別席に座っているとちょっといいことがあったりと、海老蔵さんのお客さんに対するサービスが満載です。

「毛抜」「鳴神」のおもしろさは言うまでもありませんが、その他の場面、とくに朱雀門王子最期の場の立回りはたいへんな迫力でした。

また、登場人物たちも個性豊かで、もともと「毛抜」の粂寺弾正は大好きなキャラクターなのですが、今回、安倍清行ものらりくらりとしていてなかなか良い味を出しているなあと好きになりました。

海老蔵さんが演じているからなおさらでしょうか。

早雲王子の悪人ぶりや、鳴神上人の真面目さとのギャップもいいのかもしれません。

海老蔵さんは出突っ張りで、早変りあり立回りあり、男に迫ったり女に迫ったり(笑)。

善人も悪人も演じ分けていて、なんというか、全く妥協せずに全身全霊をこの舞台に捧げているようなそんな印象を受けました。

カッコイイです、海老蔵さん。

何回でも観たい! と思うような興奮する舞台でした。

(4/5観劇)

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『美女と竹林』 森見登美彦

先日妹と書店に行ったとき、森見さんの新刊が平積みされているのを見て、

「誰がなんと言おうと、姉ちゃんは森見さんが好きなのですよ」

と言ったところ、妹が、

「誰がなんと言おうと、って…おもしろいね」

と笑ったので、「これでわが妹は森見さんに強い興味を持ったに違いない。よし、モリミーファンをまた一人増やしたぞ」とほくそ笑んでいたのだけれど、今思えば、「そんなにヘンテコな作家なのか。そんなら読まん」と思わせただけかもしれない。

いや、ヘンテコはヘンテコかもしれませんが、愛嬌のあるヘンテコなのです。

それはこの『美女と竹林』を読めば一目瞭然です。

虚実入りまじった新感覚の随筆集。

なんとも森見さんらしいではありませんか。

そしてヘンテコの裏に、実は「愛」が描かれているのではないかとわたくしなんぞは思ったりもするのです。

それはこの連載(「小説宝石」に連載されていた)の最初と最後読み比べたり、竹林伐採の場面を読んでなんとなく感じるものですが、まあ、そんなものを読み取ろうとしなくとも、大変おもしろい随筆集です。

竹林バンザイ!

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