『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎
首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の話。
伊坂幸太郎の小説は娯楽だ。
「伊坂的」といわれる構成も、伏線も、おしゃれな会話も、魅力的な登場人物も、どれもステキだ。
会話が同じ文字数でなされていたり、第四部「事件」の前の第三部に「事件から二十年後」が置かれていたりするのも、「伊坂さんだねぇ」という感じでいい。
しかしそれ以上に、わたしは伊坂作品の根底にいつもある“不条理”が気になって仕方がなく、その不条理への対抗策を模索しているような伊坂作品が好きである。
この小説の主人公、青柳雅春も「逃げる」という方法で“不条理”に正面から立ち向かっている。
圧倒的な力を前にして、等身大の人物がもがく。
そして、苦しい彼を支えるものの一つが、学生時代の仲間とその思い出だ。
取り戻せない時間、引き返せない場所。
THE BEATLESのアルバム「ABBEY ROAD」に乗せられ、彼の脳裏に浮かぶ昔の光景は、現状が現状なだけになんだかもの哀しい感じがするけれど、仲間と共に過ごした時間が、青柳雅春を支える。
時間というのは、人とのかかわりというのは、ちゃんとわたしたちの中に積み重ねられていく、そういうものなのだ。
そこら辺りを書いている伊坂幸太郎がやっぱり好きだなあ。
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